Kyber Network(カイバーネットワーク)は、トークン経済圏における、分散型流動性ネットワークです。トークンの流動性や瞬時の交換をエコシステムに提供し、経済圏のスムーズな価値循環を実現します。
流動性を安定的に提供するために、Kyber Networkでは“リザーブ”と呼ばれるシステムを採用しています。
今回はKyber Networkに関心を持つ人々のため、より深くシステムや現状を細かな点まで分かりやすく解説していくつもりです。
「KyberSwap の大まかな使い方と特徴が分かればいい」という方(ほとんどそうだと思います)は、以下のブログをお読みいただければ十分かもしれません。

より明確に仕組みを知っておきたい方は、ぜひこの記事を読み進めてください。
Kyber Networkを構成するプレイヤー
Kyber Networkは、どのようにしてトークン経済圏に流動性を提供しているのでしょうか?
一口にリザーブと言っても、それらに関わる主体は様々なものに分類できます。
Kyber NetworkのWhite Paperから、よく引用される図をもう一度見てみましょう。
Kyber Networkを構成する主要なプレイヤーは、
- ユーザー
- リザーブコントリビューター
- リザーブマネージャー
- Kyber Networkオペレーター
の4種類です。これらのプレイヤーが有機的に関わり合うことでKyber Networkが成立します。
以下より、まずこれら4種類のプレイヤーの役割を明確にします。
ユーザー
このユーザーとはまさしく私たちのことで、Kyber Networkを通してトークンの送信や受信をする人々のことです。
ただ一口にユーザーといっても、
- エンドユーザー
- プラットフォーム(DApps等)
に大きく分類できます。
1. エンドユーザーはKyberSwap を使ってトークン交換する人のことで、私たちがKyberSwap を通してトレードすれば、私たちはエンドユーザーです。
2. のプラットフォームは、サービス上で利用されるトークン変換を全てKyberを通して行う事業者(大口ユーザー)です。
私たち一般ユーザーからすれば 1 の役割に馴染みがありますが、Kyber Networkの本質はむしろ 2 にあることは以下のブログに書いたとおりです。

関心ある方は、ぜひこの記事でKyber NetworkのDEXを越えたビジョンに注目してください。
リザーブコントリビューター
リザーブに資金(ETHやERC20)を拠出する者のことで、Kyber Networkに流動性を提供するのはこのプレイヤーです。
リザーブコントリビューターは、Kyber Network内に自らの資金を設置してユーザーと取引することにより、スプレッドから利益を享受することが可能です。
当然、一回一回の利益は決して高いものではありませんが、Kyber Networkが市場へ浸透するにつれて取引高が増加し、単発は薄利でも最終的には大きな利益を見込んで参加します。
ただ、初期のKyber Networkの取引高では、スプレッド利益によるリザーブコントリビューターのメリットが薄い状態です。
従って、初期はKyber NetworkがICOで集めた資金を使い、自らが唯一のリザーブコントリビューターとなっていました。
取引高が増加するに伴い、リザーブコントリビューターのメリットが強くなり、多くのリザーブが参加することになります。
リザーブマネージャー
リザーブマネージャーは、リザーブを管理する主体です。
前述の通り、リザーブコントリビューターはKyber Networkに資金を拠出しますが、それはスプレッドを設定して取引して利益を得るためです。
その際のスプレッドを決定するのがリザーブマネージャーです。
Kyber Networkにはリザーブが複数存在しますが、各リザーブにはそれぞれリザーブマネージャーが存在します。
リザーブマネージャーの役割は大きく分けて、
- スプレッドを含めた交換レートの提示
- リザーブ内トークン割合のリバランス
の2つです。
各リザーブマネージャーはトークン取引のスプレッドをKyber Network内でユーザーに提示します。
その中での、ユーザーにとってのベストレートを提示したリザーブのみが取引でき、利益を上げられる仕組みです。
この例図では、9DGDを提示したリザーブのみ取引できることとなります。
つまりリザーブマネージャーは、
- リザーブの利益を最大化できる
- 他リザーブより良いレートを提示する
という2つの相反する要素の妥協点を見出して交換レートを決定する重要な役割があります。
また、「リザーブ内には、どんなトークンをどんな割合で保有しておくべきか?」の戦略を考えることもリザーブマネージャーの大切な仕事です。
彼らは外部の取引所と通じ、例えば「1ETHで100EOSをユーザーに渡したから、すぐに100EOSを1ETHで買っておこう」など、いつでもユーザーの需要に応えられるようにリザーブ内のトークン割合を常にリバランスします。
データから、需要が多いと思われるトークンを多く準備するわけです。
ここでの注意点は、通常はリザーブコントリビューターとリザーブマネージャーは同一主体であることです。
原則的に、彼らは自らの利益を最大化できるように自己責任でマネジメントを行っているわけです。
White Paperでは、コントリビューターとマネージャーが同一主体であるリザーブを、プライベートリザーブと呼んでいます。
反対に、コントリビューターとマネージャーが異なるリザーブをパブリックリザーブといいますが、これらはコントリビューターの資産保護のための準備が整うまで導入されません。
パブリックリザーブの制度が整備されれば、個人でも簡単にリザーブコントリビューターになれるはずです。
パブリックリザーブのいない現状では、リザーブコントリビューターとリザーブマネージャーを分類する必要はありません。
Kyber Networkオペレーター
1番下にあるKyber Networkオペレーターは、ネットワーク内の全体的な管理をする役割を持っています。
主に、
- トークンの追加/廃止
- リザーブの追加/廃止
の2つです。
例えば2018年4月現在でKyber Networkが取り扱うトークンはETHやDAIを合わせて22種類ですが、どのトークンを、どんなプロセスで追加するかはオペレーターの役割です。
また、現在Kyber Network内のリザーブは、「Kyber Network自身が設置しているリザーブ」と「DEXの流動性プロバイダーであるPryctoが設置するリザーブ」の2つですが、どんなリザーブをどのように連れてくるのかも、オペレーターの自由です。
現在このKyber Networkオペレーターの役割は、Kyber Network自身が担当しています。
ちなみにこのKyber Networkオペレーターの役割、White Paperには、
Initially the Kyber team will act as the KyberNetwork operators to bootstrap the platform in the early phases. Later on, a proper decentralized governance will be set up to take over the task.
プラットフォームを自ら動かすため、初期フェーズはKyberチームがこのKyber Networkオペレーターとして活動する予定です。その後、仕事を引き継ぐために適切な分散型の管理をセッティングします。
と書かれており、徐々にKyber Networkオペレーターの役割を外注することも視野に入れられています。
様々な分散管理が考えれますが、例えば「新規トークンの追加/廃止はリザーブマネージャーの自由にする」などが議論に上がります。
確かに迅速にトークンを上場させることができますが、Centraなど詐欺まがいの通貨の上場を極力避けるため、まだまだKyber自身は積極的ではありません。
Kyber Networkの収益モデル
次は、「Kyber Networkはいかにして収益を上げているのか」について解説していきます。
kyber Networkの収益は、リザーブからの手数料に尽きます。リザーブから収益の一部をKNCで受取り、それをパートナーに分配し、残ったKNCは焼却(バーン)します。
リザーブマネージャーはスプレッドにより収益を得ますが、取引高に応じて手数料をKyber NetworkにKNCで支払います。
(KNCで支払う必要があるため、リザーブはKyber Networkへ参加する際、支払い用のKNCを購入しなければなりません。)
ここで収益モデルの話を出したのは、Kyber Networkにはユーザーを連れてくるウォレットやウェブサイトとの提携が非常に大切であるからです。
「プレイヤー」としては紹介しませんでしたが、ユーザー増加には彼らが欠かせません。
例えばモバイルアプリのTrust walletや、オンラインウォレットのMy EtherWalletにログインすれば、すぐにKyber Networkを使ってトレードすることが可能です。
これらを通した取引からの収益は、Kyberが手数料の30%をシェアしています。ウォレットプロバイダーは手数料収入のためにKyber Networkを導入しますし、それにより取引高の増加が見込めます。
リザーブから受け取った手数料をシェアした後、残りがKyber Networkの収益となります。
しかし、Kyber Networkはこの取り分の中からいくらかの割合をburnし、供給量を減少させるという、一見奇妙な手法を取っています。しかし、これこそが彼らのモデルが注目される大きな理由です。
burn(永遠に捨てる)ことで供給量を減らし、KNCトークンの価値を高めることで、エコシステムに関わるプレイヤー全てにインセンティブを与えることが目的なのです。
現在、Kyber Networkは自らの取り分の80%をburnしていますが、こちらも実験的な数字です。
burn割合が非常に高く思われますが、そもそもKyber Networkは自身が主要なリザーブであるため、収益源はそちらで確保されています。
今後、Kyber Networkでの取引高が増えれば増えるほど、
- リザーブは手数料用のKNCを常に買い戻す
- KNCは取引高に応じてバーンされる
といった好循環が進んでいき、KNCトークンの価値上昇を通じてKyber Networkに関わる全ての関係者にメリットが出るエコシステムです。
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