Kyber NetworkのCEO, Loi Luuのインタビュー(英文)の後半の日本語訳です。
日本語訳の前篇はこちらからお読みください。

- 暗号通貨/ブロックチェーン業界一般について
- DEXの一般社会への普及において、多くの問題から一つピックアップするとすれば?一般社会の消費者に広めるためのカギとなるのは何でしょう?
- ロードマップにあるGormosの進捗はまだシークレットでしょうか?すでに公にできる情報はありますか?
- 現在のマーケット状況をどう考えていますか?さらにハイクオリティのプロジェクトにリソースを割り当てることはありますか?
- ビットコインETFのSEC承認に楽観的な意見が見られますが、決定は2019年2月まで延期されそうです。マーケット状況が影響したように思えますが、どうでしょう?
- ブロックチェーンの “キラーアプリ” について、既にあるのでしょうか?それとも、遠く離れた将来なのでしょうか?どんなものを想定していますか?
- 暗号通貨の学習について、最初にこの業界に関わったのはいつですか?そこからどんな点で発展しましたか?また、何が必要ですか?
- 疑問の浮かぶ多くのプロジェクトを見てきました。FOMO3Dなど、創設者は違うというでしょうが、初めての人からするとスキャム/ポンジスキームに見えますが…
- Podcastや他の媒体など、チェックするに値するメディアはありますか?
- インタビュー翻訳終了
暗号通貨/ブロックチェーン業界一般について
前回の質問事項は、Kyber Network個別のプロダクトに関するものが主体でしたが、後半はブロックチェーン業界一般の話題が比較的多くなっています。
以下は全てこちらの記事の翻訳で、カラーボックスはこちらの注釈です。英語が得意な方はぜひ原文をお読みください。
DEXの一般社会への普及において、多くの問題から一つピックアップするとすれば?一般社会の消費者に広めるためのカギとなるのは何でしょう?
これはDEXのみならず、他の分散型プラットフォームやアプリケーションも同じですが、乏しいUXと低い流動性が問題になっていると考えます。
そこでKyberでは、流動性こそがユーザビリティを決定づけるし、いかにトークンが様々なアプリケーションやユースケースで活用できるかが重要であると信じています。
加えて、それを瞬時でシームレスな方法で実現し、コストや摩擦も低い状態にしなければなりません。
多くのdAppsはユーザーに自社トークンの使用を求めています。もしあなたがGnosisやAugurのようなアプリケーションを利用したいとき、あなたは前もって他の場所からそのトークンを購入しなければなりません。
人気のアプリケーションをたくさん使うために、何百ものトークンを保有しなければならないかもしれません。もし、iPhoneアプリで50の様々なアプリを使うとき、50もの異なったトークンを保有する気になるでしょうか?
私はそう思いません。Kyberは、50のアプリを使うときに、50のトークンを買う必要のない未来を創りたいのです。
もしdAppsがKyberを統合すれば、Kyberでサポートされている様々なトークンを決済に受け入れることができますし、それによりユーザー層を劇的に広めることが可能です。
dAppは、自社トークンを持っていないユーザー、例えばOmiseGOトークンやAugurトークン、Kyberトークンを持ったユーザーにリーチすることができるのです。
ロードマップにあるGormosの進捗はまだシークレットでしょうか?すでに公にできる情報はありますか?
私たちはGormosについて、あちこちでいくつかの議論をしています。
Gormosのアイディアは、Kyberが乗っているブロックチェーンのUXとスケーラビリティを向上させるためのものです。
私たちが現在直面している問題は、イーサリアムにはまだ長い反応時間(latency)があることです。
あなたが何かを送る毎回、トランザクションがブロックに入るまでの10~15秒は待たなければなりませんし、1$ から 5$ ほどの手数料が必要です。
CryptoKittiesやFCoinなどによる混雑が発生したときには 10$ ほどの高い手数料も必要です。
Gormosのゴールは、ハイパフォーマンス / スケーラブルでありつつ、分散されてセキュアなパブリックブロックチェーンを作ることです。
私たちは、パブリックブロックチェーンの持つ素晴らしい特性を犠牲にすることなく、パフォーマンスを向上させたいのです。
Gormosでは、基礎となる技術としてシャーディングとプラズマを使います。そして、2つの技術の最も良い部分を実現させることが可能です。
しかしGormosではその分、少し特定用途向け(application specific)となります。つまり、もしあるゲームをGormos上で走らせたい場合、Gormos上の分散型チェーンを実行するのとは異なる形になるかもしれません。
なので、これはイーサリアムのような “world computer” や、 DIFINITYのような “インターネットコンピューター” ではありません。
Gormosはより特定用途向きのブロックチェーンであり、その点でASICマイナーのようなものかもしれません。
全体的なアイディアとしては、何かアプリケーションを活用したいとき、特定のアプリケーションのためのブロックチェーンパフォーマンスを向上させるために、基礎的な構造を通してできる策略があるということです。
現在のマーケット状況をどう考えていますか?さらにハイクオリティのプロジェクトにリソースを割り当てることはありますか?
私は、マーケットはまだ再更生のプロセスにあると考えています。Etherに限らず、ビットコインや他のコインも去年は成功を収めました。
しかし今の状況は、他のプロジェクトにとっても、マーケットを鑑みることなく、プロダクトを構築してローンチするためのよい機会になっています。
マーケットは静かですが、より長期的なビジョンや、この業界で本気で何がしたいのかを皆で語ることができます。
私は一般的には、毎年こういったサイクルがあると考えています。たくさんの新たな人々が参加し、たくさんの新たなプロジェクトがプロダクトを導入しようとしています。
私は、これらの多くは長期的に生き残れるわけではないと推測しています。今から5年以内に、どんなプロジェクトがCoinmarketcapのトップ100に残っているでしょうか?
全てが完全に新しいプロジェクトになっているでしょうか?確信がもてる問題ではありません。
ビットコインETFのSEC承認に楽観的な意見が見られますが、決定は2019年2月まで延期されそうです。マーケット状況が影響したように思えますが、どうでしょう?
私はETFとSECの承認にはあまり関心がありません。これらには、この業界で私たちがより真剣に取り組むべきいくつかの問題がありますし、資金管理に関するソリューションもその一つです。
多くの人々がそのためにトライしていますが、目安となる標準がないですし、それについても十分に議論されていません。
皆が自分自身のソリューションに取り組んでいて相互に話し合っておらず、全員が従えるような標準指標が現れることが難しくなっています。
スイスでのCrypto Valley Conferenceでは私は3~4の会社と話をしましたが、彼らは彼ら自身の解決策に取り組んでおり、驚いたことに彼らはお互いに議論をしていませんでした。
彼らは同じことに取り組んでいるようです。お互い話し合い、標準指標を作りたいところですね。 これはシンガポールでも同じです。
皆、保管方法の解決策に取り組み、ヘッジファンドを追い抜こうとしています。そしてたくさんのヘッジファンドはこの業界に参入しようとしていますが、参入するためにはそのためのインフラが必要です。
一般社会のユーザーは、初めてビットコインを買うことさえ本当に難しくなっています。一般社会への採用を増やしたいのなら、取り組むべき問題がいくつかあるわけです。
Coinbaseは素晴らしいことに、Coinbaseアプリからユーザーが簡単にトークンを売買できるようにしています。暗号通貨の夢が「銀行口座のない人々に手段を与える」ことならば、素早く人々がEtherやbitcoinを買ったり、この業界に参加できるより良い手段が必要です。
ブロックチェーンの “キラーアプリ” について、既にあるのでしょうか?それとも、遠く離れた将来なのでしょうか?どんなものを想定していますか?
一つのキラーアプリを見つけるのはとても難しいと思います。ソーシャルネットワークになるのか、WhatsappやTelegramのようなメッセージング系になるのか、もしくは別の分散的で安全なプライベートメッセージアプリなのか。
いずれにせよ、まだ現れてはいないと考えています。
この業界で最もアクティブなものはトレードや投資に関するものですが、私たちが目指すのは、暗号通貨や他のトークンがどこでも、どんなアプリでも日常使いでも活用可能になる未来です。
もしそれが可能になるならば、 “キラーアプリ” さえ不要になると考えています。
暗号通貨の学習について、最初にこの業界に関わったのはいつですか?そこからどんな点で発展しましたか?また、何が必要ですか?
私がこの業界に入ったのは2013年の終盤から2014年の最初です。当時はPhDのフォーカスとしてブロックチェーンの研究を行い、オンラインでの資料を見つけるのに大変苦労しました。多くのコンテンツはビットコインのメーリングリストやチャットにあったのです。
現在ではpodcastやブログ、本に至るまで、多くの資料が手に入るようになりました。たくさんの人々が素晴らしい本を書いていますね。
これは、私が本当に話したいポイントです。たくさんの人々がこの業界に一般のユーザーを巻き込もうとしていますが、私が思うに、この業界に連れてくるべきもう一つの人々を忘れていると思います。
それは開発者であり、エンドユーザーに直接サービスを提供するためにアプリケーションを構築する人々のことです。
これこそ、Kyberが明瞭な資料の準備にフォーカスし、Kyberと統合したい誰もが活用できるAPIを準備した理由です。
他の多くのプロジェクトも、同じようなことにトライするはずです。
これは極めて重要なことであり、なぜなら私たちのアプリケーションが主流になるのか、もしくは “キラーアプリ” になるのかどうかは確実ではないからです。
しかしもし、この業界により多くの開発者を巻き込めたとすれば、彼らのうち一部は暗号通貨界のFacebookを創るマーク・ザッカーバーグになるかもしれません。
私はこちらの方が、ビットコインETFやSECの承認を得るよりも重要なことだと考えています。
今は開発者や研究者がこの業界を学び、暗号通貨やブロックチェーンを始めるための資料はたくさんあると思います。
しかし、ノイズも同じく存在します。多くのプロジェクトは、本当のブロックチェーンではないかもしれません……。彼らの多くは、それが暗号通貨やブロックチェーンだと主張します。
しかし注意深く見れば、実際にはいくつかのサーバーであることに気づくはずです。
疑問の浮かぶ多くのプロジェクトを見てきました。FOMO3Dなど、創設者は違うというでしょうが、初めての人からするとスキャム/ポンジスキームに見えますが…
人々は、それが議論を呼ぶもので長く続くものではないことを分かっているでしょう。しかしそれと同時に、他の正当なアプリケーションに比べ、まだ膨大な量の活動が見られています。
これが私たちの向かうべき先なのかどうか分かりません。たくさんの怪しいアプリケーションが業界に現れており、注意を集めています。
Podcastや他の媒体など、チェックするに値するメディアはありますか?
Podcast: Unchained (Laura Shin); Epicenter (Epicenter)
Blog: Vitalik Buterin
インタビュー翻訳終了
これにて、前篇と後編に分かれたインタビューの日本語訳は終了です。
誤りなどありましたらご遠慮無くご報告ください。
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