2018年の4月、Kyber Networkは世界で最も広く知られるイーサリアムウォレットであるMyEtherWalletと提携/統合しました。

この時点でも月間1500万回近くのPVを誇る巨大なイーサリアムウォレットですが、そのウォレット内でKyber Networkにアクセスし、トークン交換をすることが可能になったわけです。
Kyber Networkが、My EtherWalletと統合しました!
これにて、MEWから離脱すること無く、直接トークン交換が可能になります! pic.twitter.com/KyNtjpoUCc
— hory (@taisuke_hory) April 24, 2018
今回は、この大きな統合に関してYouTube上で公開されている、Kyber Network CEOのLoi Luu氏のインタビューを翻訳します。
MyEtherWalletとの統合に関する詳しいインタビューというより、より多くの視聴者に向けた内容です。
Loi Luu氏へのインタビュー
以下に、インタビュー動画から興味深い質問と回答のみピックアップし、ところどころ私の雑感も交えて翻訳します。
質問/回答事項は以下にまとめられます。
- 他のDEXとの差別化について
- MyEtherWalletとKyber Networkの統合について
- 流動性確保のためのトークン補充について
- KNCバーンのメカニズムの意図
- クロスチェーンやデリバティブの導入について
- 事物のトークナイゼーションについて
- 今後の狙いについて
要約のため、重要事項のみの大まかな抜粋&翻訳ですので全てが気になる方は動画を直接ご覧ください。
以下は全てビデオからの、インタビューアとLoi Luu氏の発言の翻訳です。(青や赤枠はこちらからの注釈です。)
DEXと差別化について
どのように他のDEXとの差別化を図っているのですか?
簡単なKyber Networkの紹介としては、「全てをオンチェーンで行う、イーサリアム上の分散型取引所」です。
中央サーバーはなく、信頼すべきサードパーティは存在しません。
Kyber Networkを利用するときは、全てが完全に透明なスマートコントラクトで処理されますし、イーサリアムブロックチェーンのセキュリティを享受します。
また、私たちはオーダーブックを持ちません。ユーザーがKyberへ訪れたときは売買価格のみ確認し、それに満足すれば取引を実行します。

オフチェーンでのオーダーブック管理のDEXとは違うのですね。
私たちの方法は、オフチェーンによるオーダーブック管理とトレードオフの方法です。オーダーブックを実装すると、オフチェーンで管理する主体が必要ですし、中央サーバーも必要になってしまいます。
また、私たちにとっては互換性も重要です。
誰かが私たちのサービスを統合したい場合、オフチェーンのサーバーではスマートコントラクトで通信することができません。
私たちはMyEtherWalletを始めとして、多くの人々や組織にとても簡単にKyber Networkを利用して欲しいと考えており、それが「全てをオンチェーンで行おう」と決定した理由です。
スケーラビリティの問題もよく言われますが、Kyber Networkでは全ての取引は単一のトランザクションで済みます。
オフチェーンソリューションを採用する場合でもセトルメント(決済)では一度オンチェーンで処理します。
スケーラビリティでは違いはありません。
MyEtherWalletとKyber Networkの統合について
MyEtherWalletで”Swap”タブを選択するのみでトークン交換できますが、バックエンドでは何が起こっているのですか?
MyEtherWalletからKyberを使ってトークン交換をする際、まずMEWは価格を確認するため、Kyberへスマートコントラクトでクエリを発します。
そのレートをユーザーはMEW上で確認することができ、満足すれば取引を実行できます。
一度トランザクションが承認されれば、すぐにトークンを受け取ることが可能です。デポジットはもちろん、不要な待ち時間は発生しません。
全てはスマートコントラクトにより、透明性が保たれます。
流動性確保のためのトークン補充について
流動性のためのトークンの補充はどのように行われているのですか?
マーケットメイカーや流動性プロバイダをオンチェーンに設置し、やりとりを行っています。

流動性プロバイダは直接ユーザーとトレードしますが、例えば多くの人々がDAIをトレードした場合は、十分なDAIの供給がなくなってしまいます。
彼らはリザーブと呼ばれますが、例えばDAIの在庫が不足した場合は、OTC取引や他の取引所でETHとDAIを交換するなどしてリバランスします。
リザーブの補充や価格発見を他の中央集権的取引所に頼り、共存する部分もKyber Networkの大きな特徴です。
なので、中央集権取引所にリストされていない上場前トークンなどを取り扱うことはできません。
これらを素早く行い、全てのトレードを準備しています。
KNCバーンのメカニズムの意図
Kyber Networkはトークンホルダーに嬉しい、KNCバーンのメカニズムを持っていますね。
将来的にはKNCはいくつかのユーティリティを持つと思いますが、今はDEX上で、手数料としての一つのユーティリティを持っています。
全てのトレードの手数料としてKNCを求めるモデルを採用していますが、もちろんユーザーは手数料を支払う必要はありません。
私たちは簡単にトレードしてもらうことを望んでいるので、DEX利用のためにユーザーにKNCを支払うことを求めるなんてナンセンスであり、不要なワンステップを求めたくありません。
従って、流動性プロバイダ(リザーブ)に全てのトレードの手数料をKNCで支払うことを求めています。
その手数料は例えば、Kyber Networkにユーザートラフィックを運んできてくれるMyEtherWalletなどのウォレットに支払います。
残り一部は運営の出費に使用し、他はバーン(焼却)して供給量から外します。
この行動の根拠は、まず一つ目に、私たちのプラットフォームが利用されればされるほど、KNCの総供給量が減少する状況を作るためです。
二つ目は、Kyber Networkの取引高が増えるほど、KNCの需要をかきたてる状況を作るためです。
ユーザーが私たちのプラットフォームを採用すればするほど、価格も自ずと上がってくることになります。
クロスチェーンやデリバティブの導入について
ICONとの提携があり、2019年のクロスチェーンのために、White PaperではCosmosやPolkadotについても言及されていました。デリバティブの導入などもあり、たくさん仕事がありますね。
私たちは、分散型ファイナンスにおいて重要な役割を担いたいと思っています。何らかの形で、トークンのトレードを求めるユーザーに対して、分散型の流動性ネットワークを築きたいのです。
ICONやWanchain等との提携はその目的の一つで、ユーザーにどんなトークン/通貨でもオンチェーンで安全にトレードできる環境を提供するためです。
例えばKyber NetworkはWanchainとの提携により、Wanchainプラットフォーム上に新たにKWDEXと呼ばれるDEXを設置する予定です。
クロスチェーンのロードマップは、2018Q4に前倒しされています。
また、デリバティブや他の高度な金融商品を提供するため、シンガポールで同様の商品を提供する2,3のプロジェクトと共に働いており、後に統合することで2019年初期にはユーザーに届けられると思います。
事物のトークナイゼーション(トークン化)について
多くのプロジェクトは、多くの事物が将来にトークン化、証券化することについて語っていますが、先程の金融商品などはその流れの大きな一部だとお考えですか?
それはセキュリティ(証券)トークンに限ってのことでしょうか?トークナイゼーション一般についてですか?
一般的な傾向をお伺いします。例えばDGXはゴールドをトークン化しました。今後はどのようなトレンドになっていくでしょう?
トレンドとしては、数年間は人々がより多くの資産をブロックチェーンに持ち込み、トークン化するようになると思っています。
分散的なブロックチェーンに資産を持ち込んだ際は、流動性が非常に大切です。他のマーケットでも、流動性が十分にないために価格が急落することがよくあります。
私たちが、全ての人々に機能する流動性を提供できれば、分散型ファイナンスにおいて非常に重要な役割を担うことができると考えています。
今後の狙いについて
とてもワクワクする未来があることが理解できました。何か比較的短期間に達成したいことはありますか?
Kyberのビジョンは、DEXを超える存在になることです。この新たなエコシステムに、他のプレイヤーを呼び込む存在になりたいです。

私たちのオンチェーンの流動性(プール)に全ての人々を繋ぎ、彼らの流動性の問題を解決したいと思っています。
その点で、現在私たちが担っている役割に自信を持っています。
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