Bitcoinは PoW により大量の電力を消費しているが、それは無駄ではない理由

ビットコインの消費電力 ブロックチェーン解説

Proof of Work は暗号通貨、パブリックブロックチェーンの合意形成プロセス (コンセンサスアルゴリズム) の一つです。匿名かつ無許可、自由に参加できる大量のノードが一つの正しい台帳記入を行うための方法です。

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パブリックブロックチェーンを生み出した Bitcoin で採用されたのが Proof of Work ですが、よく「Bitcoinの Proof of Work は、電力の壮大な無駄だ」と言われることがあります。

 

随分前からずっと指摘されている問題ですが、この記事では、

 

  • 正確にはどれくらいの電力を消費しているのか?
  • Bitcoinの価値と照らし合わせて、本当に無駄であると言えるのか?

 

を考えてみたいと思います。

Proof of Work で必要になる電力

ブロックチェーンの数ある合意形成プロセスの中でも最も堅牢で安定性のある Proof of Work (PoW) ですが、その維持のため、電力という大きなコストが必要です。

 

「Nonceを発見する」という目的の達成のため、マイナーにより多大な計算リソースが投入されており、マイニングに特化した ASIC も必要になっています。

 

この消費電力が理由で Proof of Work (PoW) を嫌う人は多いです。例えば Bitcoinブロックチェーンは、Nonce の発見のための PoW により、2018年12月時点から見積もると、年間 50TWh の電力を消費しています。(最近の暴落によりマイナーも撤退、急激に消費電力が落ち込みました。)

 

ビットコインの消費電力

 

ただ、集計方法は「確実に正確」とは言えないようです。以下の記事も同じ視点から書かれているのでぜひ御覧ください。

ビットコインの電力消費量は誇張されてる?仮想通貨とエネルギー(前編) | ALIS
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世界各国で必要とする電力との比較

Bitcoin の電力消費量は年間 50TWh として、比較のために各国の消費電力を見てみましょう。

各国の消費電力

各国の消費電力

 

 

 

 

 

 

 

トップの中国は2017年に 5683TW/h の電力を消費していますが、Bitcoin の年間消費量はコロンビアとほぼ同等です。電気代という切り口に限ってみると、Bitcoinのネットワーク維持費はコロンビアの維持費と同じわけです。

当然ですがBitcoinに必要な資源は電力くらいなので、その点では国家よりもエコに維持できます。

 

世界中の電力消費の中で、Bitcoinの占める消費電力割合は 0.24% です。

 

トランザクション (取引) ごとの電力消費

Bitcoinネットワーク全体を維持する電力は国家と同じレベルですが、その電力を全トランザクション (取引) 量で割れば、トランザクションごとの消費電力が計算できます。

 

データによると、Bitcoinでは一つのトランザクションごとに消費される電力は 548kWh です。

Bitcoinのトランザクションごとの消費電力

 

これを一般家庭が消費する電力に置き換えて考えてみます。電力事業連合会のデータによると、2015年に日本の一世帯が消費した電力は一ヶ月に約250kWhです。

一世帯の消費電力

つまりあなたが Bitcoin を他の誰かに一度送金すれば、日本の一世帯が2ヶ月間で使う同等の電力が消費されるということです。

 

日本の一世帯の1日の消費電力は約8kWhであるため、Bitcoinのトランザクション一回による消費電力は、約30世帯分の一日の電力を賄えます。

 

VISAのトランザクション手数料との比較

BitcoinとVisaの比較

世界最大の決済ネットワークであるVISAと比較した図です。

 

前述のように、現在の一つのBitcoinトランザクションの電力消費は約548kWhですが、VISAなら10万トランザクションを約169kWhで処理します。

 

一つのトランザクションの数値を出すと、VISAは約0.00169kWhであり、約548kWhであるBitcoinの約32万倍の電力効率です。

 

Proof of Workは電力の無駄ではない理由

Bitcoinに関する数字はどんどん変遷するので「あくまでも現在の数値である」と認識しておくことは重要ですが、それを差し引いてもなお非効率な電力消費を裏付けるようなデータが揃っています。

 

しかし、今後の可能性を含めた Bitcoin の意義と有用性を考えれば上記の電力消費は全く無駄ではなく、むしろまだまだ消費量を高めてもよいと個人的に考えています。

 

Bitcoinは国境や権力から独立した、公共の価値交換ネットワークである

まず過小評価されている Bitcoin ですが、その価値の多くは「国境や国家から独立した、公共の価値交換ネットワーク」である点です。

 

ブロックチェーンの特性上、誰かが発信したトランザクションは誰にも邪魔できない検閲耐性を持ち、「後から改ざんしようとしても実質的に不可能である」という改ざん耐性, セキュリティなど、他にも様々な特徴があります。

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世界中どこに存在していても、つまり政治的に弾圧されても、財産の自由が認められなくとも、銀行口座を持つことができない人々でも、Bitcoinネットワークを使えば誰にも邪魔されず確実に価値の送受信が可能です。

自国通貨が不安定である国民は、bitcoinを購入することで自らが持つ価値を既存せずに済みます。これが bitcoin に期待される SoV (Store of Value, 価値の保存) 機能です。

 

国境と無関係であり国際送金手段として有効であることはもちろんですが、こういった緊急時に不可欠であり、なおかつ応用範囲も広いグローバルネットワークは人類全体でコストを払ってでも維持すべき価値があると考えることができます。

 

現在は全ての国家の 0.24% ですが、安定したネットワークになるのであれば「さらに多くの電力を使っても無駄ではない」というのが個人的な意見です。

 

Bitcoinの電力消費を控えることは、セキュリティを落とすことと同じ

Bitcoinのマイナーは Nonce の発見のためにASICを準備して膨大な電力を消費し、採掘できなかったマイナーが消費した電力は全くの無駄となってしまいます。

 

しかしネットワーク全体で見れば、Nonceを見つけられなかったマイナーの消費電力は無駄ではありません。全体の消費電力が高まるほど、悪意あるブロックを生成するために必要とされるコストも高まるからです。

自分の送金を取り消すなど、都合のよいブロックを独占的に生成したい場合はネットワーク全体で消費する電力の51%以上を占めなければなりません。

 

また、外部からBitcoinを攻撃しようとする場合も、マイニング専用のASICを多数準備した上で電力消費をする必要があります。これらが重なり、国家や権力から自由なネットワークを堅牢に保守することができるわけです。

 

そもそもBitcoinの存在意義は、VISAなど既存の決済手段とは決定的に異なるもの

VISAの処理能力と比較し、「BitcoinのPoWは電力の無駄」と断定することは簡単ですが、上述のように VISA と Bitcoin の存在意義は誕生から決定的に異なります。

 

決済/送金の仲介者が独断で取引履歴の記録を担い、当然国家からの制約を受ける VISA のようなシステムに対して、Bitcoin はその信用リスクやそこから派生する社会的コストを一掃するシステムです。

 

本質的に存在意義が異なるものの消費電力の比較から、多すぎるか少ないかを議論することはそもそも困難なことです。まだ人類は、こういった公共ネットワークの適正コストを知らないはずです。

 

他の手段は、電力以外の資源を消費する

Ethereum の創設者の Vitalik氏は、「Proof of Work の電力消費は地球環境に悪影響を及ぼす」としてあまり肯定的ではありません。

 

しかし「ゴールドの採掘は更に環境に悪い」と指摘しています。

 

Vitalik氏は PoWマイニングによる電力消費よりも、ゴールドの採掘による環境破壊の方が “より酷い例” として考えているようです。

“価値の保存の観点からは、個人レベルでも社会レベルでもゴールドよりbitcoinが優れています。PoWも環境に悪いが、ゴールドはもっと悪い。”

 

例えば bitcoin に期待されているSoV (価値の保存)機能を備えているゴールドは、採掘により電力以外に様々な環境破壊が伴います。

http://www.ethical-keitai.net/1

価値の保存として考えると、bitcoin は環境に優しいコモディティになれるのかもしれません。

 

VISA等の決済/送金手段に比べればBitcoinの電力消費は激しいものがありますが、既存システムの間接費や見えないコスト (送金取り消しや財産没収の可能性等) はさらに高コストかもしれません。

 

クレジットカードにおいても、VISAだけでなくアクワイアラや加盟店が関係し、手数料などの形でもコストは生まれています。ネットワークの維持コストは通常、電力だけではないのです。

 

しかし Bitcoin にかかるコストは、基本的にマイニングにおける電力のみです。ここは大きな違いです。

 

例えばVISAのトランザクションごとの消費電力に関しても、オフィスの電力や雇用に伴う電力以外の資源消費も考慮に入れる必要があります。

 

円やドルなどの発行に関しても、印刷や他の間接費を考慮に入れると「Bitcoinは他に比べて環境に悪い」と断言できなくなる可能性もあります。

 

トランザクションごとの消費電力は下がってゆく

現在は1つのトランザクションに約548kWhという大量の電力を消費していますが、ライトニング・ネットワークなどオフチェーンソリューションが発達すれば話が変わります。

ライトニング・ネットワーク…決済に使用する bitcoin をチャネルに置き取引を行い、最後の結果のみ Bitcoinブロックチェーンに書き込む技術。取引の多くはブロックチェーンの外 (オフチェーン) で行われるため、取引処理能力は格段に高まる。

 

技術開発が進み、普及すれば取引の多くはBitcoinネットワークに負担をかけずに済むため、トランザクションあたりの消費電力は劇的に低下するはずです。

 

いずれにせよ Bitcoin は未だに技術開発の途中であるため、現在の数字でものを語ることは難しいということです。

仮にライトニング等の技術開発が進まなかったとしても、価値の保存や国際送金手段としての実用価値は将来的にも高まっていくはずです。

 

クリスマスツリーの方が電力の無駄

不変性 (改ざん耐性) の維持はエネルギーの無駄ではない。クリスマスのライトアアップはエネルギーの無駄だ。

 

毎年のクリスマスで予定のない人からすれば、クリスマスツリーの電力の方がよほど無駄であることを毎年確認しているはずです。

PoWによる電力消費は、Bitcoin に集中するのでは?

個人的な意見では、Proof of Work により維持される暗号通貨は Bitcoin だけで十分であり、他の通貨に利用されている電力は徐々に Bitcoin へ流れてくる、と考えています。

 

なぜなら Bitcoin のような PoW チェーンでは電力を消費することが不可欠であり、その電力がそのままシステムの堅牢性に繋がっているからです。

 

消費電力が低いのに価格だけが高い通貨になった場合、攻撃インセンティブの高い狙われやすい通貨となるだけです。逆に言えば、消費電力が高いからこそ公共システムとしてのセキュリティが安定し、評価 (価格) も安定するということです。

 

将来を見ても、ETFなどを通じて世界で認められる “デジタル・ゴールド” としての地位を確立する可能性があるのは間違いなく Bitcoin ですし、それに相応しいセキュリティを持つのも現状は Bitcoin しかありません。

 

暗号通貨が広まるにつれ金融業界での適正な評価が固まれば、他のPoW通貨の相対的な脆弱性がフォーカスされ、ネットワーク参加者も安定したマイニング報酬を求めて Bitcoin に移ると考えるのが自然な流れであると感じます。

結果、消費電力の劣った PoW通貨はさらに存在感を薄めてしまうように思えます。

 

しかし、どのみちPoW通貨の乱立はいたずらに電力を分散させ、堅牢性の高いチェーンの誕生を困難にする結果となりますし、暗号通貨の最も重要な価値である「国境や国家から独立した、公共の価値交換ネットワーク」の誕生から遠のいてしまいます。

 

むしろ他のPoW通貨の消費電力が Bitcoin へ移り、Bitcoin がさらに消費電力が高く安定した公共ネットワークへと成長する方が人々にとって好ましいように思います。

 

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